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オンリー シルバー フィッシュ

西田さんがミステリーに挑む!
いかにもな「洋館」を舞台にした2編の極上ミステリ。

「ONLY SILVER FISH」
舞台は一本橋を超えた先にある洋館。
いかにもな設定が用意されています。
そこに、これまたいかにもな執事がいて、
案内されて入ってくるマシュー。
クリスティ財団の跡取りです。
ミステリでクリスティと言えば…
かの「アガサ・クリスティ」!!
彼はその孫というわけ。

さて、マシューがこの洋館で何をしようかといえば、
婚約者のエミリーと結婚パーティーをしようというわけです。
お互いの大切な友人を招待して。

幸せいっぱおの場所に、突然不吉な招待状が届く。
「幸せのサインを始めた瞬間、一人ずついなくなる…。
アガサが書いたであろう物語のように…続ければ…誰もいなくなる」
ここから物語に、不穏な空気が流れ始めます。

そして、いざ婚姻届にサインをした時に、
執事のパーカーがいなくなった!!
物語は招待状に書かれるままに進んでいく。
果たしてこれは、誰が何のためにやったことなのか!?

もうひとつ語らなくてはならない大事なお話。
タイトルになっている「オンリーシルバーフィッシュ」について。
それは、広間にある大きな水槽の中に。
この水槽は、物語の中でも、物理的な意味でも、象徴的な存在です。
ここには寂しい1匹の魚がいて、
「その魚の名を知ることができれば、たった一度だけ、過去を振り返ることができる」
そんな言い伝えがあります。
この魚の名前は何なのか?その意味するものとは?

「+GOLD FISH」
こちらも登場人物こそ全く違いますが、舞台の洋館は共通。
ついでに言うと、執事のパーカーも共通です。

洋館に休暇を取りに来た青年・マーティズ。
1週間の休暇をゆったり過ごすつもりでいたのだが、
聞かされていた予定とは異なり、客が何10人もやってくる。
共通点は、本の謎を解いた者ということだけ。
その中の一人が選ばれ、過去を振り返ることができる。
「オンリーシルバーフィッシュ」の名前を知ることで。

ここでも例の魚が出てくるのですが、目的が違う。
今回は予め、魚のもとに人々が集められている。
その点がもう一つの物語との大きな違いだと思いました。

ミステリ好きということで、曲者揃いの中から、
魚の名前を教える一人が選ばれる方法とは…
自分以外の誰かを推薦すること。
そして一番推薦者の多かったものに、魚の名前を知る権利が与えられる。

そこから様々な人間模様が描かれていくのですが、
どの人物もなかなか濃いキャラなので、興味深いです。
誰が選ばれるのか、というのも然ることながら、
魚の名前は何なのか、その意味するものは?
そもそも、その者が選ばれたことにも意味があるのです。


さて、この二つの物語は、世界でももっとも有名なミステリ作家、
アガサ・クリスティをモチーフにしています。
彼女にはたった11日間だけ、空白の時があるそうです。
それは、11日間の謎の「失踪」。
当時の世間では大騒ぎになったそうです。

そんなエピソードからインスパイアされた戯曲。
どちらも洋館で過ごした、たった1日だけのお話です。
最初に構想されたのは、「+GOLD FISH」の方で、
確かにこちらの方が、上述のアガサの状況に近い気がします。
それは「散々な一日」という言葉をモチーフにした一人の夫人の物語。
希望の光が見えない、復讐の物語なのですが、
稽古の途中で西田さんの意思が変わったのだとか。

それが、もう一つのお話、「ONLY SILVER FISH」。
こちらは「孤独」の物語です。
舞台って面白いもので、稽古をしながらどんどん変わっていくんですよね~。
初演を迎えてもそれはまだ完成されていなくて、
千秋楽になってやっと完成する、とも言われるくらい。
それだけ流動的で、未知の可能性があって、予期せぬ影響を受けて、
化学変化を起こしていくのが、戯曲なのです。

魚の名前を知ることができれば、一度だけ過去を振り返ることができる、
なんてやっぱり西田さんはロマンチストだな~と思ってしまいました。
結婚という大きな決断をする時に、「本当にこの人でいいの?」って、
誰もがよぎってしまうのではないかと思うんです。
それは俗に言うマリッジブルーってやつなんじゃないかと思うのですが。
そんな時にこの魚がいたら…もうたまったもんじゃないですね。

振り返りたい過去…私もそんなこと言ってたらキリがないです。
本当は今の私なんて全部なくしてしまいたい。
できることならいっそ、生まれる前に戻してほしい。


舞台の技術的なことを言うと、この作品は、大がかりな舞台装置などいらず、
極端なことを言えば、椅子とテーブルさえあれば公演ができてしまう作品です。
なので、取り組みやすいかも!?
あとはこの作品に限ったことではないですが、人の心の機微を表現し、
絶妙な人間ドラマを作ってほしいですね。
でも、神妙になってばかりだと退屈なので、笑いもとっていいのですよ。
その点、ちゃんと西田さんは織り込んでくれてます。



ONLY SILVER FISH

ONLY SILVER FISH

  • 作者: 西田 大輔
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2008/08/01
  • メディア: 単行本


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