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ホタルノヒカリ 9

前巻のラストで、最大限干物な姿をマコトに見られてしまった蛍。
そして、マコトから完全に拒否され、フラれてしまう…。

そう、この巻は丸ごと「失恋」。
どん底の失恋からどうやって立ち直っていくのか、
蛍を見守りながらも自分も励まされてしまう、そんな1冊なのです。

どんな失恋にも原因があるわけで。
蛍の場合、その干物姿が直接の原因というわけではなかった!
そんな蛍の自然体を、マコトに一度も見せてこなかったこと。
そりゃ誰だって、好きな人の前では、取り繕ってしまうことはある。
だけどマコトが許せなかったのは、その自然体を、他の男には見せていたってこと。
血の繋がった家族ならまだしも、そうでない部長だったもんだから。
しかも、恋愛相談とか、部長が蛍にとって、大きな心の支えになっていたのも知っていたから。
家族以外で、恋人以上に心許せる異性がいれば、否定されるのも無理ない。
軽い気持ちで部長と同居していた蛍は罪深いのです。

そんな自分の罪を自覚した蛍。
住むところも失って、優子のところに転がり込む。
親友ならではの心意気で、失恋したての蛍を休ませることができました。

失恋をふっ切る薬なんて、「時間」しかない。
そんな時、全力で打ち込める仕事があるといいなって思う。
たまたま蛍が任された仕事が「失恋カフェ」。
何度もボツになる度に企画を練り直して、企画が見事通る頃には、
蛍自身も失恋に向き合って、考えることができました。

だけど厄介なのは、蛍とマコトが、仕事上でまだ繋がりがあるってこと。
ある時、何も知らない上司からの指示で、マコトの作品展のパーティーの仕切りを任される!
蛍とマコトの関係は、周囲に知れ渡っていたので、いたたまれない思いをするが…。
対応に困っていたところ、マコトの口から堂々と、
「今は仕事上の良きパートナーです」と宣言される。
その場でまた皆に知れ渡ってミジメな気持ちにはなるんだけど、
スッキリとふっ切るには良いキッカケとなったのでしょう。
恋愛関係は終わったけど、人として否定されたわけではないからね。
その証に、マコトがこれまで蛍をはじめSW社に支えてもらったことを、とても感謝していました。

山田さん曰く、
「フラれてミジメで、ドン底の自分認められたら、
ちゃんと浮上できるってわかったわ」って。
これは実際に山田さんが経験した話。
蛍も今まさにドン底の状態だけど、部長や殿、優華など、
周囲のあたたかい支えのおかげで、どうにかまた日常に戻れそうです。

ところで、住むところを失った蛍はどうするのか?
一時的に優子のところで世話になったものの、ずっとそこにいるわけにいかず、
蛍が見つけたのがなんとウィークリーマンション
しかし、その週極の家賃ですら、金欠で払えなくなる…。
そこへたまたま通りかかった部長ですが、蛍はまた部長に甘えてしまうのか!?

一人暮らしのくせに荷物の多い蛍。これは私も同じ!
私も一人暮らしの家を引き払う時、あまりの荷物の多さに驚きだったな(笑)
干物は家につくので、家の中の荷物はどうしても多くなるんですよ。


さて、今回とっても勉強になった、失恋との向き合い方。
ちょっと受け売りっぽいですが、まとめてみます。

まずは、失恋直後のケア。
①フラれた真の原因は本人もまだ考えたくないもの。
 そこにはふれず、一週間はそっと見守りましょう。
②ふられた彼への後追いは、彼女の傷口を広げるだけ。
 シゲキしないようやんわりと阻止しましょう。
③この時期は当たり障りのないバカ話などがベスト
④失恋したては、なにかと判断力を失っているものです。
 広い心で接してあげて。
⑤物を処分することによって過去の気持ちも整理されます。
 しかしひとりではふん切りがつかないもの。手伝ってあげて。

こんな風に支えてもらえたら、やさぐれた心も癒されますよね。
でもいずれは自分自身でふっ切らないといけない。
そんな時に有効なのは「時間」。
時間はどんな時も平等に流れているので、生活をしなくてはならない。
どん底の自分を認められたら、あとは浮上するしかないのだから。

そう考えると、恋愛以外で日頃打ち込んでるもの、大事にしてるものってすごく大事だなって。
私なんてただでさえ恋愛とは縁遠いので、どういう人生なのかわからなくなっちゃうよ。
だから、やりがいのわからない仕事はもうしたくないなって思います。
それと、こんな私に関わってくれる人たちは、大事にしたいと思う。

失恋観から人生観へと変わってしまいましたが、
私も今、いろいろと思うところあって、何だか考えさせられました。





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circus

FictionJunction YUUKAの2枚目のアルバム
ですが、この名義ではこの後、アルバムは発売されていないのです。

circus
表題曲であり、オープニングにふさわしいような、華々しい曲。
サーカスのように軽快に流れるリズムが心地よいです。

aikoi
アンニュイで不思議な感じが漂う曲。
恋愛の迷宮にはまり込んでしまうような、
ぐるぐると不思議な感覚がまとわりつきます。

Silly-Go-Round
アニメ「.hack//Roots」のオープニングテーマ。
「.hack」シリーズはこれまでも携わってきていたのでおなじみです。
この曲も.hackの世界観にピッタリで、
リアルとバーチャルの間を、見境なく行ったり来たりするような、
そんな感じが表れています。
歌詞に出てくる「リセットボタン」なんて、ゲームを意識したワードですよね。

blessing
そのものスバリ、幸せになれる曲です。
歌詞もそうなんですが、YUUKAさんの幸せに溢れる歌声がまた、
祝福されてるような気分になります。

荒野流転
荒野の荒々しい感じなのですが、どこか和風の雰囲気も混ざっていて、
荒野を駆ける侍のイメージです。
潔く、凛とした勇ましさを感じます。

よろこび
3拍子でよろこびいっぱいの曲。
サビで階段をのぼるように高音になっていくところが好きです。

光る砂漠
広大な砂漠のように、雄大な曲で、
YUUKAさんの伸びのある高音が更なる広がりを感じさせる。
未来なんて広大な砂漠のように見えないもので、
こんな風にどっしり構えながら歩んでいけたらよいと思えたのでした。

romanesque
ラテンのリズムの情熱的な曲で、なかなか斬新です。
主題歌となったアニメの雰囲気に沿ったものでしょう。
歌い方もいつもの柔らかい感じとは違い、ちょっと凛々しく熱っぽい感じ。
本当に表現力が幅広いなぁと思います。

ピアノ
文字通りピアノにのせて歌っています。
厳密に言えば、ピアノの演奏に、チェロとボーカルが乗っている。
ピアノありきの曲で、ピアノの主旋律がそのままサビのメロディになって歌っています。
アコースティックライブで映えそうですね。

六月は君の永遠
こちらは本当にピアノ1本で歌い上げていて、
ピアノは梶浦さんが演奏しています。
囁くように静かな歌声がまた癒されます。
6月といえば梅雨でジメジメしたイメージもありますが、
ジューンブライドもあり、永遠を連想させやすい季節でもありますね。

焔の扉
機動戦士ガンダムSEED DESTINYの挿入歌で、
作品中にこの曲が流れると、鳥肌が立ちました。
決意だとか宿命だとか、作品のテーマとなる部分とリンクしていて、
作品を盛り上げる要素を担っていました。

angel gate
YUUKAさん主演の同名のミュージカルのテーマソングでした。
さすがミュージカル出身だけあって、素晴らしい歌唱力です。
本来のYUUKAさんの力を知った気がしました。
舞台でもこれだけ伸び伸びと歌えたら気持ちいいだろうな。



circus

circus



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PLAY

アルバムのコンセプトは「遊び好きな大人の街」。
その街とは、先行シングルの「FUNKY TOWN」からインスパイアされたそうです。
そんなコンセプトに沿った架空の街に合う人物たちを登場させたいということから、
ジャケットではコスプレに初挑戦!
攻撃的なイメージにしたいという自身のアイディアから、
ムチを持ったポリスに扮しています。
R&BやHip-Hopを軸に独自のスタイルで自由に遊んだ、
安室ちゃんのニュー・スタイルを感じ取れるアルバムです。
個人的には、アメリカのドラマやアメコミの世界観が近いかな、なんて思います。

HIDE & SEEK
このアルバムのリード曲であり、コンセプトを象徴する曲です。
今回はこんな感じのスタイルで攻めていくからよろしく!というような、挑発すら伺えます。
驚かされながらも目が離せなくなって、ついていっちゃうんですよね。
PVではジャケットと同様にコスプレをし、ムチを駆使しながら踊る姿がカッコイイ!

FULL MOON
満月の夜の妖しさ漂う1曲。
途中で狼の遠吠えも聞こえてきます。
大人の夜の胸騒ぎがファンタジックに表現されています。

CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK
恋患いで眠ることも食べることもできないという、
私とは真逆の少女像を歌った曲。
安室ちゃんが当時はまっていた少女漫画の影響で、
高校生の恋愛の世界観が歌詞に出ているそうです。
そのためか、PVでは安室ちゃんが制服っぽい衣裳で登場します。

初夏向けのファンキーで踊れるキラキラ・ポップ・チューンということで、
キレッキレのダンスがすごい!
振り付けは、安室ちゃんが以前から憧れているジャネット・ジャクソンなども担当した振付師、
シャーネット・ハードが担当。
その激しいダンスは、PVでとくとご覧いただけます。

IT'S ALL ABOUT YOU
これだけ振り回されて、わがままもご機嫌取りも尻拭いももうたくさん。
こんなに自己中な相手にバカらしくなるっていう、冷めた態度が私とシンクロする。
最近思うのですが、結局私も自己中なんだなってことです。

FUNKY TOWN
実質、先行シングルで、このアルバムのコンセプトの主軸になっている曲。
明るくポップでリッチで大人でお洒落な、安室ちゃんのジャンルの世界観を決定的にしています。
久しぶりに安室ちゃんがCM出演した、リプトンリモーネのCMソングです。
そのCMの演出内容でもあるキラキラ感がPVのテーマにもなっていて、
ゴールドのミラーボールの上で踊ったり、まばゆいダンスシーンは圧巻です。

STEP WITH IT
とてもセクシーなシーンをお洒落に歌う、ラテンなノリの曲。
あからさまではなく、さりげないラテンの度合いが、
熱すぎず、斬新だなと思うのです。

HELLO
電話に出た時の「HELLO」で、電話がモチーフになっています。
黒電話のリンリン鳴る音がお洒落に効果的に使われているのが印象的。
私も普段、電話にほとんど出ないので、
文字通りメロディーコールにしたらちょうどいいかな、なんて思ったり。
PVでも携帯がたくさん浮かんでます。この時はまだガラケーだったね。
ピンクでキラキラのデコがしてあって、安室ちゃんらしい。

SHOULD I LOVE HIM?
住む世界が、大事なものが、生き方が違いすぎたら、結構致命的だと思う。
全部が完璧に合う人間なんていないんだから、どこかで折れないといけないとは思うけど、
どこで妥協するか?ってところですよね。
そこが譲れたら一人ではいないと思う。

TOP SECRET
アメリカのドラマ「プリズン・ブレイク」のシーズン2日本版テーマソングとしてオンエアされてました。
この頃、24をはじめ、海外ドラマが流行ってましたよね。
秘密ということで、声を潜めて歌うところがとてもセクシーです。

VIOLET SAUCE
安室ちゃん側がイメージソングを歌いたいと逆オファーしてコラボが実現した、
映画「シン・シティ」の日本版イメージソング。
映画を見て気に入った安室ちゃんがイメージから浮かんだインスピレーションを基に、書き下ろされました。
ダークな世界観とロックが融合して、日本人離れしたカッコよさです。

BABY DON'T CRY 
この頃はダンス映えしたり、音として楽しめる曲が増えてきたので、
あまり歌える曲が少なかったのですが、この曲は唯一、ボーカル重視な曲。
切なくも輝いた「幸せな気持ちになれる」感動的なミディアム・ポップナンバーということで、
是非とも気持ちよく歌いたいところなんですけど、
歌ってみたらわかる通り、結構スタミナ使うんです。
安室ちゃんは踊ってなくても歌唱力のすごさに気付かされる。
曲自体はすごく前向きで励まされる応援歌で、人前でも歌えたらいいなって感じなんですけどね。

PVのコンセプトは「前へ歩き続ける人への応援歌」ということで、
安室ちゃんがひたすら歩き続けます。
代々木だとか見覚えのある街並みを歩いて行くんですけど、
安室ちゃんが颯爽と歩いてると、日本じゃないように思える。

PINK KEY
こちらもリプトンのミルクティーのCMソングになりまして、キラキラ感が継続しています。
新しい世界の扉を開ける勇気を与えてくれる応援歌。
その鍵となるのがこの曲です。
叶うわけないって諦めてたこといっぱいあります。
今すぐ始めればいいのに、なんだかんだグズグズしてしまって…。
余計なこと考えてたらせっかくのチャンスも逃がしちゃいますよね。
無理でもちょっとずつ試してみるのも悪くないんじゃないかって、最近また自分の夢にぶつかり始めてます。
明日世界が終わっても後悔しないように。
さあ私も後は鍵穴にこのキーを差すだけです!!


DVDの方には、前述したPV5曲と、スペシャルムービーとして、
The World of GOLDEN EGGSとのコラボムービーが収録されています。
流行ったよねぇ、GOLDEN EGGS。私もドハマりりました。
本編でもおなじみ「ナターリアの部屋」のコーナーで、
「GUSHIケンバンド」という謎のバンドがゲストとして登場するのですが、
そのメンバーの一人「安邑」の声を、安室ちゃんが担当しています。
安室ちゃんの声優初挑戦!
本編にも劣らないシュールさはさすがです!!



PLAY(DVD付)

PLAY(DVD付)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: AVEX GROUP HOLDINGS.(ADI)(M)
  • 発売日: 2007/06/27
  • メディア: CD


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Opus

この作品からシングルは発売されず、ミニアルバムが発売されるようになりました。
構成としては、新曲3曲に加えて、既存曲のバラードバージョン。
それからボーナストラックとして、新曲のミュージックボックスによる
インストゥルメンタルバージョンなります。

それでは、まず新曲のレビューから。

Opus
ルルティアの楽曲には、ネガティブな感情で心の奥底まで沈むものもあれば、
晴れやかで幸せいっぱいな曲もあり、極端な分化をするのですが、
この曲は明らかに前者の方。
歌詞の1語1語が心の底をえぐってくるのです。
すごくドロドロした感情なんだけど、ルルティアの歌詞で表現すると、綺麗さすら感じる。
だから聞いていると何だか心のデトックスになるような気がするんでしょうね。

流光
こちらもハッピーな曲ではないですが、とても切実さや儚さが表現された曲。
ミディアムテンポでたたみかけるようなサビが、焦燥感を加速させます。
この主人公の少年には、無事に想いを届けることができたらいいな、と
切に願ってしまいます。

もう1曲の新曲、「星と羽」は歌詞が掲載されておらず、
いずれ発売されるアルバムにも収録されるので、その時にまた書かせていただきます。


そして、既存曲のバラードバージョンについて。
今回収録されたのは、「水景色 星模様」「愛し子よ」「アラベスク」。
本人曰く、ルルティアの曲はどの曲もバラードにできるらしく、
かねてよりバラードアルバムを作りたいと言っていたのが形になりました。
「水景色 星模様」と「アラベスク」は、シンプルでアコースティックなアレンジになったので、
もともと幸せいっぱいの暖かい曲でしたが、優しさが増しました。
「アラベスク」なんてピアノアレンジで、弾き語りしたら素敵だな。
激変したのは「愛し子よ」。
この曲はデビュー曲で、その衝動的な内容からかなり衝撃を受けた曲でしたが、
こういうバラードバージョンになって、今度は儚さがプラスされました。


そしてミュージックボックスについて。
いわゆるオルゴールの音色によるインストです。
ルルティアの曲は、どの曲がオルゴールになってもいいな、という感じ。
単にミュージックボックスで演奏しているというだけでなく、
「Opus」では水滴が反響し、「流音」では滝のように雨が降るという、
もともとの曲が持つ雰囲気を維持したアレンジになっているのも素晴らしいです。



Opus

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グラスホッパー

伊坂さん初のハードボイルド小説とも言えるこの作品は、
物騒な人たちがたくさん登場します。
これまでの作品にも完全なる悪人が登場しては退治してきたのですが、
今回はその悪党たちの数がハンパない。
それもそのはず、殺し屋たちの世界を描いたものだからです。

鈴木という元教師で裏社会とは全く縁のなかった者が、
この業界に足を踏み入れるきっかけとなったのは、亡き妻の復讐を果たすため。
鈴木の妻は二年前、暴走する車に轢かれて死んだ。
その暴走車を運転していたのが、寺原の息子。
寺原とは「フロイライン(ドイツ語で令嬢の意味)」という会社の社長で、
この会社は非合法的なことに手を染めている。
寺原の息子は社員からも馬鹿息子と言われるほどどうしようもなく、
遊び半分で車を暴走させるなんてザラだった。
鈴木の妻はその犠牲になってしまったわけだが、
あろうことか鈴木は復讐を果たすために、この会社に入社してしまうのである。

契約社員として採用された鈴木が一か月の間にやらされたことといえば、
アーケード通りで女性を勧誘することだった。
関心を示す者がいれば喫茶店へ連れ込み、化粧品や健康食品の説明をする。
それはもちろん非合法的な品だった。

通行人に声をかけるのはいわば試用期間で、その教育係となっていたのが比与子という社員。
その日は次の段階に進むということで、鈴木に更なるむごいことを試させようとしていた。
というのも比与子は何となく気づいていた。鈴木の魂胆に。
教師だなんてまっとうな仕事をしていた人間が、突然こんな裏社会の仕事に就くはずがない。
何か裏があるのではないか?
もっと言えば、妻が寺原の息子のせいで死んで、復讐したいのではないか?
馬鹿息子があちこちで迷惑をかけてるのはしょっちゅうで、
鈴木のように復讐を企んで入社してくる人は幾人もいた。
だけど、馬鹿息子は罰せられることがない。
父親や政治家にえこ贔屓されているからだという。

そんな馬鹿息子に会える機会が突然訪れる。
鈴木の試用期間の仕上げに、寺原息子が立ち会うというのだ。
しかし、交差点から向かってくる時、寺原息子が鈴木の目の前で車に轢かれた!
現場を目撃していた比与子は、何者かに押されたせいだという。
「押し屋」という専門家がいると言うのだ。
それらしき人物が現場から遠ざかっていくので、鈴木に追うように命じた。

「押し屋」だけじゃなく、業界にはいろんな専門家がいるそうです。
例えば、ナイフ使いだとか、毒殺の専門家だとか。
変わったところで「自殺屋」なんてのもいる。
本当に人殺しの業界なんてあったらたまったもんじゃないけど。

「自殺屋」として知られるのが鯨。
彼と対峙した時、何か威圧的な力によって自殺させられる。
この力について鯨本人もよくわかっていないのですが、
鯨いわく「人は誰でも、死にたがっている」
これって人間の「死の本能」だと思うんです。
人は遅かれ早かれいずれ死にゆく。
タイミングや死因はそれぞれですが、死に向かって生きているのには違いない。
ただ、同じ死というゴールに向かって、
死に近づいていくか、それとも死にゆく運命に抗っていくか。
そのちょっとした切替スイッチのようなものがあって、
鯨の力は死に近づいていくようなキッカケを与えるものじゃないかと思います。
自ら死を選ぶ動物は、人間だけですからね。

そんな鯨が仕事を依頼されるのは例えば政治家など。
汚職事件の尻拭いに、秘書に自殺させる。
こうして他人の罪を被って自殺させられた者が33人。
鯨は今や、その亡霊につきまとわれていた。
それはきっと鯨の中の罪悪感に違いない。
過去を清算して、足を洗うべきだ。

ナイフを使った殺人を得意とするのが蝉。
岩西という男から仕事を斡旋されて実行する。
依頼された仕事をするが、殺す相手の情報は何も知らない。
ただ言われた通りにやればいいだけ。
しかしその様子はまるで操り人形みたいではないか。

これらの復讐や苦悩が、悪の権化のような寺原の息子を殺したとされる押し屋のもとに集まる、
そんなお話です。
構成としては、鈴木・鯨・蝉のパートがかわるがわる展開されて、
最終的には一つの結末になるという、スッキリした読了感が味わえるもの。
ただ内容が内容だけに、残酷な描写が多いので、苦手な人はいるかもしれません。
殺人のシーンなど、あえて冷酷な文体で書かれているのは、
殺し屋たちのリアルな視点なのでしょう。

伊坂作品では、実際の映画や音楽や小説が絡んでくるのも特徴で、
私もそれが好きだったりします。
今作で言うなら鯨が愛読している文庫本がドストエフスキーの「罪と罰」。
実際に作品中で題名が名言されてるわけではないのですが、
「逆さに読むと『唾と蜜』になる」と言う台詞でわかります。
こういうのをきっかけに読んでみようって思ったりするんですよね。

一方、劇中でバンバン引用されている作品もあります。
蝉が自分の置かれている状況に気付かされた映画。
ガブリエル・カッソ監督の「抑圧」。
仕事をした殺人現場でたまたまテレビで見た映画となっています。
そして、岩西が歌詞を引用しまくるミュージシャンのジャック・クリスピン。
これだけ引用されていながら、架空なんだそうです。
てっきり実在するものだと思ってしまったよ。

数々のジャック・クリスピンの語録の中でも、この言葉はグッときました。
「死んでいるみたいに生きていたくない」
鯨の話をした時にも少し書きましたが、動物は死に向かって生きていくのです。
だとしたら、行きつく先が決まっているなら、少しでも生き生きと生きていたい。
命を奪う殺し屋たちも、それは同じなのかなと思います。

象徴的なのは、蝉がしじみの砂抜きをするシーン。
水面に浮かんでくる泡は、しじみの呼吸。いわば生命のしるしです。
私もあさりやしじみの砂抜きをすると、つい見つめてしまいます。
その後、食べちゃうんですけどね。
「殺して食って生きている」という当たり前のことを自覚すればいいのに。
あまり神経質になりすぎると何も食べられなくなってしまいますが、
確か「いただきます」という言葉にはそういう意味が込められているのではなかったか。
こうして大事な生命をいただいて生きているのだから、一生懸命生きないといけない。

鯨が過去を清算するきっかけを与えたのが、ホームレスの田中。
田中?と聞いてピンと来る方も多いかもしれませんが、
これまでの作品でも、状況を変えながらも登場してきた「田中」です。
お約束の足が悪く、ぶつぶつ喋る。
その田中が鯨に言うわけです。
過去を清算するには、「対決ですよ」と。
その対決とは、鯨が十年前にやり残した仕事で、先を越された押し屋との対決を意味していた。

こういう文字通りの対決だけじゃなく、
生きていくってことは、その時々の「対決」なんじゃないかなって思うのです。
鈴木の亡き妻は、バイキングで一品ずつ向き合って、食べれるかどうかの対決をしていた。
これはさすがに極端だけれども、一生懸命生きるってそういうことなんじゃないかと思う。

田中といえば、デビュー作の「オーデュボンの祈り」から登場していますが、
そのオーデュボンでのお話がそのまま出てくるのです。
それは未来は神様のレシピで決まるということ。
ようするに、先のことは自分たちの範疇の外で、すでに決まっているということです。
これは喋る案山子の優午の言葉なのですが、「オーデュボン」でのお話は、
田中が読んだ本に出てくるエピソードということになっています。
もはやオーデュボン自体が劇中小説だったのか、現実なのかわからない。
もしかしたら今回の田中は、オーデュボンに登場した田中そのものなのかな!?

オーデュボンの優午はは、人々より高い位置から全体を俯瞰して見ているような印象がありました。
今作でその立場を担っている人がいるなら、押し屋の槿(あさがお)。
職業柄か常に冷静で、何事にも動じない。
自分のことを探りにきた、挙動不審な鈴木に対しても、どっしりと構えている。
そんな槿の語ったことが、今作の題名になっているのです。
それがグラスホッパー=バッタの話。

トノサマバッタは、密集したところで育つと「群衆相」と呼ばれるタイプになる。
そいつらは黒くて翅も長く、凶暴だ。
理屈としては、仲間がたくさんいる場所で生きていると、餌が足りなくなるから、
別の場所へ行けるように飛翔力が高くなるってことらしい。
バッタに限らず、どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。
槿いわく、人間も同じではないかと。
確かに通勤ラッシュなんて、不毛でしかないと思う。
だから私は普通の仕事はできないし、ラッシュなんて大嫌い。

この作品、結構「虫」がキーワードになっているかと思います。
冒頭から鈴木は昆虫のこをを考えていたのです。
学生の頃に聞いた大学教授の話では、これだけ個体と個体が接近して暮らしている人間は、
哺乳類よりも虫に近いんじゃないかと。
これが全ての伏線ですよね。
他にも、槿の次男の孝次郎が昆虫シールを集めていたり、
田中がかぶってるキャップに虫眼鏡のイラストが描かれていたり、
「昆虫」がらみのキーワードが出てくると敏感になってしまいます。
スズメバチなんていう毒殺専門の殺し屋もいるしね。

他の作品とのつながりといえば、こんなオマージュ的なものがありました。
蝉が途中で、チンピラのことを、土佐犬と柴犬にたとえているシーン。
これは陽気なギャングで、人を犬にたとえてたのと一緒ですね!

ところで、伊坂作品で描かれる家族像が好きです。
今作で言うと槿の家族かな。
槿の家族は、妻のすみれと、健太郎・孝次郎の2人の息子の4人家族という構成。
すごく温かくて、押し屋なんて物騒な世界に生きる人の家族とは思えない。
そんな家族も色々あるんですけどね。
家族にもいろいろな事情やかたちがあって、
私自身が不完全な家族構成だったので、家族像に憧れがあったり、
家族の一部が欠けても不幸なんかじゃない!って思いたいからでしょうね。

今回も作品を通して、いろいろ考えさせられたり、勇気をもらったりしました。
なんだかんだ言って、鈴木は頑張ったよ。結構頑張ったと思うよ。
それに比べたら私なんてまだまだ全然頑張ってない!
鈴木の妻の言う通り、「やるしかないじゃない」をモットーに、
やれることはやってみようと思う。



グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2007/06/23
  • メディア: 文庫


あらすじを読む


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新世紀エヴァンゲリオン 11

アニメでも有名な、カヲルとの決着をつける巻です。
アニメと違うのは、カヲルの登場する長さ。
アニメではたった1話しか登場しなかったカヲルですが、
コミックでは結構なボリュームを割かれています。

また、シンジとカヲルの関係性も全然違う。
アニメではカヲルに対してベタベタと依存的な反応を示したシンジでしたが、
コミックでははっきりと不信感を抱いて口にする。
まぁ、これが普通の子の反応だと思うけどね。

そんなシンジを試すかのように、カヲルはミッションを遂行する。
カヲルは人の形をした使徒だったのです。
これはもうネタバレというか、あまりに有名な話なので、もういいですね。
ちなみにアニメのサブタイトルにもなり、コミックのサブタイトルの中にも使われた
「最後のシ者」という言葉には、いろんな意味が含まれていると言われています。
「シ者」は「使者」だったり「死者」だったり。
あと、2文字の自体をよく見てくっつけると、「渚」という一文字になります。

そうしてゼーレが直接送り込んできた使徒は、ターミナルドグマへとたどり着く。
そこに幽閉されているリリスとカヲルが接触すれば、全ての生命が滅び、
サードインパクトが起こる。
それを阻止するために向かったのは、シンジの乗る初号機だった。
いくら使徒とはいえ、カヲルのことを好ましく思ってないとはいえ、
人の形をしたモノを手にかけたくない。
かといって、サードインパクトを起こさせるわけにもいかない。
シンジにとっては辛い選択です。
というか、こんな大変なことをたった14歳の少年に選ばせるなんて!

だけどカヲルは、シンジに自分を殺してもらいたいと願う。
自分の意思で自らの死の形を選べることだけが、
カヲルに唯一残された絶対的な自由であったから。
そしてかの有名な、初号機がカヲルをしめ殺すシーンへとつながる。
コミックでは、優しく包み込むようにカヲルをしめ殺す。
その感触を手のひらに残し、忘れられないように。

こんな思いを抱えて、シンジはこれからどうやって生きていくのか?
ここまでして守った未来に意味はあるのか?

カヲル曰く、サードインパクトが起これば、人はただ滅びるのではなく、
新しい形で生まれ変わる。
ひとつに結合して単体の生命として。
そうなれば、戦いや争い、人を失う苦しみや悲しみもない。

そして、大人たちは何を企てているのか?
その真相にミサトが迫る。
物語は、旧劇場版の展開へと続いていきます。






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ガーネット オペラ

戦国武将の花形と言ったら、織田信長!!
その信長を演じさせたら、この人の右に出る者はいないでしょう!
と個人的に思っているのが、西田大輔さん。
劇団を主宰しているだけあり、染み出るオーラやカリスマ性が凄い!
まさに根っからの殿です。
そんな西田さんが描く信長の物語は、戦国のオールスター勢ぞろいの華やかなものになりました。

柴田勝家・木下藤吉郎・前田利家・徳川家康…
上杉謙信・武田勝頼・真田幸村・長宗我部元親…
聞いたことのある名前ばかりですが、それぞれの性格についてまではわからない。
それもそのはず、そんなことどの歴史資料にも書いてないのです。
だから想像するのは自由。それが歴史モノの醍醐味だと思うのです。

織田軍配下として登場するのは、勝家・藤吉郎・利家・家康。
藤吉郎は後の羽柴秀吉だし、家康は言わずもがなの有名ドコロが並ぶ中、
柴田勝家は自分の名があまり知られてないことを気にしていました。
信長が生まれた時からずっとそばにつき従っていた家臣なんですけどね。
前田利家も大河ドラマになったおかげで有名になり、
そんなことをくよくよ悩んだり、必死になったりする、
なかなか憎めない個性的なキャラクターで描かれています。
作家や演者が妄想しやすいのって、こういうところですよね。
いつかそのうち、勝家が主役の大河ドラマが放送されたりして。

あと、織田の家臣として忘れてはいけないのが明智光秀。
この人のことは後ほど語ります。

織田に対抗する大名として、越後の謙信に甲斐の勝頼、四国の長宗我部。
彼らを一同に集めて、信長はゲームを始めるのです。
彼らの本気を試すために、彼らの宝をかけて。
武将たちは困惑し、ゲームはなかなか進まないのですが、
徐々に自分たちの大事なもの=宝は何か、それを守るための覚悟はいかほどのものか、
それらがわかってくるのです。
また、それと同時に信長の真意もまた…。

信長が人を惹き付けるのは、その散り際だと思うのです。
あれだけの威厳を持った武将が、何故あっさりと命を落としてしまったのか。
信長の生涯を語る上で欠かせない「本能寺の変」。
ここには西田さんの想像と、西田さん自身とも重なるような後輩へのメッセージが託されている、
そんな気がしたのです。

歴史上、「本能寺の変」を起こした謀叛人とされている明智光秀。
この人はひたすら、石山本願寺の降伏を試みていました。
何度か足を運んでいるうちに、そこに住む熙子と心を通わせるようになる。
本願寺に咲くざくろに惹かれた二人。
その描写がとてもロマンチックだなぁと思いました。

信長を取り巻く女性たちと言えば、妻のお濃と妹のお市ですが、
この二人についても後ほど語ります。

ところで、この奇妙なゲームを持ちかけたのはルイス・フロイスという宣教師。
信長自身はキリシタン大名ではなかったかと思いますが、
その出で立ちといい、南蛮の影響は大いに受けていたかと思われます。
こうして南蛮の影響もありつつ、変わっていくべき時代だったんだと思います。
室町幕府最後の将軍・足利義昭が情けなく描かれてしまうのは、
そんな勢いのある戦国の猛者どもに圧されてしまったからなのでは!?
なんて、想像するとキリがなく、面白いですね。


さて、この戯曲にはもう一遍、「帰蝶」という作品が収められています。
これは本編よりも前、お濃が帰蝶という名で呼ばれていて、
信長の妻になる少し前からの話。

お濃もとい帰蝶は、「マムシ」と呼ばれた美濃の大名の斉藤道三の娘。
信長のもとに嫁ぐことになったのは、もちろん政略結婚にほかなりません。

この時代、武家の女が家の為に嫁がされるなんて当たり前のこと。
信長の妹・お市もまた、浅井長政に嫁ぐことになっていました。
二人とも、女の意思などお構いなしに勝手に決めてしまう男たちに、辟易していました。
特に帰蝶は激しい気性の故、なんと信長のもとに直接断りに行くのです!
ところが、信長が帰蝶をもらうのは、あながち政略結婚の為だけでもないようで…。

ストレートではないですが、ここでも信長の愛情表現が描かれます。
二人の距離を近づけるキッカケとなるのが、やっぱりざくろ。
どうしても石山本願寺を手に入れたかったのは、見事なざくろをプレゼントしたかった、
そんな単純な理由だけだったのかもしれないですね。
やっぱりロマンチストだなぁ。

上演時期が1月だったので、新年の挨拶など、お正月仕様の演出があります。
ここはもちろん時期に合わせて変えていただいていいと思うんですけどね。
その中でお正月らしくガチで羽根つき勝負をするところがありまして、
負けたら顔に墨で落書きされます。
こういう遊びでももちろん本気です!






ガーネットオペラ

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チルドレン

陣内という強烈なキャラクターの持ち主を巡る物語。
短編集ではありますが、実際はその陣内を主軸に、話が繋がります。
あくまで主人公ではなく「主軸」としているのは、
陣内自身が語り手となっていないから。
各短編ごとに語り手は変わりますが、陣内の周りの者が語り手になっているのです。
だから陣内の内情を直接的に知ることはできないのだけど、
客観的に語られることによって、陣内の人物像を作り上げながら読むことができる。
そして全部が繋がった時に、これまた何とも言えない読了感を味わえるのです。

では、その短編を一編ごとに見ていきましょう。


バンク
彼らの始まりの物語。
語り手は一人称ではないですが、同級生の鴨居の視点で語られます。
20歳にもならない大学生だった頃、閉店間際の銀行に駆け込んだところ、
何と銀行強盗に遭遇してしまうのです。

その手口はというと、二人の強盗犯が入ってきて、
まず銀行内のカメラを破壊する。
そして銀行員を含む人質全員をロープで縛り、顔にはお面をつけさせた。
銀行強盗といえば、成功しやすい手口について、
陽気なギャングシリーズでたっぷりと語られていたのですが、
人質の顔にお面をつけさせるとは、これまた斬新な手口です。
強盗犯は、頬に赤いビニールテープを×印に貼っていました。
これは、「強盗が顔に何か珍しいシールを貼っていると、
人質たちはそのシールのことばかりを覚えている」という、
陽気なギャングの成瀬の理論にも一致します。
本作中でも、「関東で最近起きている四人組の強盗犯」と言及してあって、
陽気なギャングたちのニュースは、鴨居たちの地にも轟いているのですね。


それはさておき、ロープで縛られるという仕打ちに、当然ながら陣内は黙っていなかった。
彼の基本方針は「立ち向かうこと」にあるのです。
そもそも閉店間際の銀行に駆け込み、行員に断られたにも関わらず、
断固として自分の主張を譲らなかった。
その挙げ句、銀行強盗に遭遇してしまうのですが…。
その陣内の勢いも、犯人の発砲による威嚇で制圧されてしまいます。

さて、そんな陣内の反骨精神の基礎となったものに、音楽がある。
彼はアマチュアのミュージシャンでもあり、
銀行強盗に遭遇した時にもギターケースを抱えていました。
さすがに人質の分際でギターを弾かせてはもらえませんでしたが、
おもむろにビートルズの歌を口ずさんだ。
それは鴨居を含む他の人質たちの心に響き渡り、緊迫した空気を和らげた。

陣内の音楽は正真正銘のパンクロックだと言う。
パンクロックとは、立ち向かうことなんだと。
私も中島卓偉さんのパンクロックを聴いたりしますが、
言わんとしてることがわかる気がします。
内なる主張を外へ出すというか、突き破る力があると思うんですよね。

もう1つ、陣内に大きな影響を与えたもの…それは父親の存在。
陣内の父親はかなり厳格だったらしい。
職業については明かされないですが、一定の社会的地位についていたようでした。
だけど、その偉そうな人が、破廉恥だったと。
女子高生と援助交際をしていたのだ。
陣内の反発心や捻くれた言動は、そんな父親への憤りから生じているのではないか。
この考えは、一連の作品を貫くテーマとなるのです。

ところで、銀行員以外の人質には陣内と鴨居の他に、婦人と盲目の青年がいました。
名前は永瀬。
彼は、陣内や鴨居とその後も続く友情を築くことになるのです。

永瀬は目が見えない分、状況がわからない為、
鴨居をトイレに連れ出して、状況を聞き出す。
人質の人数や、お面をつけられている状況などについてを聞き、
そこから大胆な推理を繰り広げる。
強盗犯は2人組ではなく、人質となっている銀行員全員も仲間なんだと。
それを、犯人と陣内とのやり取りの中で感じたという。

永瀬は声の調子で様々な判断をする。
曰く、「音というのは川の中で魚を拾うようなものなんだ」と。
同じ体験はできないから共感はできないけど、
頭の中で川の中に手を突っ込んで魚をつかまえるところを想像して、なるほどなぁ、と思いました。

そして物語はどうなるかというと…、陣内を牽制するための銃声で、パトカーがやってくる。
これは犯人たちも予想していなかった展開。
結果的に陣内のファインプレーになるのかな?
やがて、陣内・鴨居・永瀬・主婦の4人がまず解放される。
その後、順に人質が解放されていったが、永瀬の推理が正しかったのか、真相はわからない。
この話はあくまで、銀行強盗事件の物語ではなく、そこから始まった出逢いの物語である。


チルドレン
一気に時は進み、大学を卒業して31歳の家裁調査官になった陣内。
その後輩の武藤が語り手となります。
陣内の大学生の姿から、どうしていきなり家裁調査官なのか想像つかないが、
とりあえず読み進めてみる。

武藤がスランプに陥っていた時期がある。
担当していた女子高生が保護観察中に、再び援助交際を行った。
こんな風に裏切られることは、家裁調査官にはよくあるらしい。
だから陣内は、適当にやっている。
でも不思議なことに、陣内は少年たちに慕われているのも事実だった。

武藤が家裁に来たばかりの頃。歓迎会の帰り道。
3人の少年たちが、1人の脆弱な少年を取り囲んでいた。
喧嘩の仲裁に入るかのように少年たちの輪の中に入った陣内は、
あろうことか、取り囲まれていた少年のことを殴った!
結局、倒れた少年を助けながら、少年たち4人で逃げ帰っていった。

ある日、武藤が以前担当した少年が誘拐されていたというニュースが入る。
その少年と出会ったのは半年前、マンガ本を万引きして装置されてきた。
少年の名前は木原志朗。
面接には保護者の出席が不可欠で、志朗君も「父親」と一緒に現れた。
その親子の様子を見て、陣内は芥川龍之介の「侏儒の言葉」の文庫本を渡してきた。
それは、芥川がいろいろな事柄について、彼なりの考えを書いたものだった。
いざ面接が始まってみると、なかなか本心を打ち明けてもらうことができず、
陣内に言われた通り、この文庫本を渡すことになる。
次の面接までに、気に入った文章を見つけてくるようにと。
その場で文庫本をめくった志朗君が笑い出した。
文庫本の中に「侏儒の言葉 トイレの落書き編」という小冊子が挟まっていたのだ。
その内容は、公衆トイレに書かれた悪戯書きから拾ってきた文章が並んでいた。
まさしく陣内が街のトイレから拾ってきた名言を集めて作ったものだった!
おかげで志朗君の明るい表情を見ることができ、ここでも陣内のファインプレーとなる。

翌々日、街中でばったり志朗君に会った武藤は、驚きの事実を知る。
なんと「侏儒の言葉」を面白いと思って読んでいるというのだ。
それも「トイレの落書き編」ではなく、本編の方を。
親子で笑いながら読んでいるという。何だか私も読みたくなってきました。

ところで、家裁調査官の仕事とは、ものすごく要約すれば、
恐怖心や警戒心を取り除き、少しでもいいから信頼してもらい、本心を打ち明けてもらうこと。
具体的にはそこに技法とか方法論はなく、基本的には話を聞いてあげることだが、
そういう意味では、陣内の文庫本作戦も間違いではない。
陣内曰く、「調査官は拳銃を持った牧師」だと。
ここで言う拳銃とは法律のことだが、牧師である以上、それを持ち出さず、
罪を犯した少年が本心を打ち明けてくれるのを待つのだと。
この点で、法律を振りかざす弁護士とはスタンスが全く異なる。

とある専門書によると、家裁調査官はとは、
「心理学や社会学の技法を用いて、少年犯罪の原因やメカニズムを解明し、
適切な処遇を裁判官に意見として提出する、まさに非行問題の専門家」だと書かれているらしい。
「非行問題の原因は何か」
これは恐らく、家裁調査官の永遠のテーマだろう。
武藤は家庭環境が非行の原因だとは思っているが、ここでは明確な答えを出してないように思える。

それからは、この不思議な親子について、陣内の奇妙な思い付きも織り交ぜながら、
あれこれと推理していくミステリー作品となるのである。
陣内の思い付きが当たるかどうかはともかく、陣内に振り回されながらも読み進めるのは、
なかなか愉快でした。

余談ですが、面白いのは前の短編「バンク」とのつながり。
陣内が十代の終わりに銀行強盗に遭遇したことに言及していて、
その時に歌った曲が「ヘイ・ジュード」だということがわかります。
また、武藤が陣内の父親について聞き出そうとするが、答えは変わらず。
詳しくは語らないが、最低の大人だと。
ただし時が経って、すっかり決着がついたようなのですが、
何をどうして決着をつけたのか、ここではまだわかりません。


レトリーバー
語り手は永瀬の恋人である優子。
「バンク」で名前だけは登場したものの、その場に居合わせなかった彼女。
社会人となって、学生時代の陣内との思い出を回想します。

学生時代、駅の近くで遭遇した事件。
優子と永瀬は駅前の高架歩道のベンチで座っていました。
盲導犬のベスを連れて。
実はベスは、銀行強盗現場にもいて、命令されたままおとなしく待機していたのでした。
そんなベスに、優子は嫉妬心を抱いてもいます。
で、陣内はそんな2人と1匹を待たせ、ジュースを買いに行ったまま、
なかなか戻ってこない状況でした。

その30分ほど前は、駅前でビデオカメラをいじくってはしゃぐ女子高生たちに説教していました。
この頃、大学卒業を前にした陣内は、家裁調査官を目指して受験勉強中でした。
ここでもその志望動機は明かされていないのですが、
永瀬からはきっと向いているとお墨付きをもらうのです。

その数時間前、陣内は失恋した。
駅裏のレンタルビデオ店で働く女の子に告白し、見事にフラれた。
優子たちはその現場に半ば強制的に誘われ、店の向かい側の歩道から見守ることになった。
5分くらいして、陣内が首をひねりながら戻ってきた。
日頃、店員と客として関わってはいたが、どうやらそのやり取りから大いに自信があったらしい。

やがて、ジュースを買って戻ってきた陣内は、興奮して突飛なことを言い始めました。
「失恋した自分のために、今、この場所は時間が止まっている」と。
根拠のない出鱈目な話をするのは陣内の特技ではあるが、さすがにこれは…。
陣内によると、ベンチに座り始めてから2時間、周りの顔ぶれが変わってないというのです。
難しい顔をしている男女も、鞄を抱えた男も、ヘッドフォンを耳に当てた男も、読書する女も。
極め付けは読書している女の文庫本が、2時間で数ページしか進んでないというのだ。
呆れるほどに自分中心な考え方もさることながら、この観察力は見事なものだとも思います。

そこから陣内はそれぞれの人生を勝手に妄想し、勝手にストーリーを作り上げていく。
それが当たっているのか当たっていないのかはともかく、
結局はとある事件のファインプレーとなるのです。
適当なことを言っていながらも結果オーライなのは、この頃から?

また、陣内には別の側面もありました。
待ち合わせ場所に立っていた永瀬が、見知らぬ婦人からお金をもらった。
こういう過剰な同情を受けることは、それまでも度々ありましたが、
良い気はしないものの、永瀬本人は割り切ってもいました。
ところがその光景を知った陣内は、「ずるい!」と喚き出す。
目が見えないことなんて関係なく、永瀬だけが特別扱いされるなんて納得できない!と。
こういう誰にでも「普通」に接することができるのが、家裁調査官に向いてたりして。


チルドレンⅡ
再び、家裁調査官となったあとの話に戻り、語り手も武藤になります。
「チルドレン」から1年後、陣内は32歳。
一か月前の人事異動で、武藤は陣内のいる少年事件担当を離れ、
家事事件担当になっていました。
そんな中、仕事終わりに偶然遭遇した陣内に、武藤は飲みに誘われるのです。

仕事の話になって、陣内は家事事件は気乗りしないと言う。
その道理はというと、少年事件の場合は、警察署や検察亮から少年が送致されてきて、
自分の意志で家裁に来ているわけじゃないから、どうにか助けてやりたいと思うが、
家事事件の場合は、困っている当事者が申し立ててくるので、
「わざわざ自分たちの問題を持ち込んで来やがって」と思ってしまうらしい。
挙げ句、どの調査官も「絶対に」そう思うと決めつける。

その一年前、職場の仲間たちで飲みに行った際に、隣の中年男性客たちと、
少年法について口論になったことがあった。
その時も陣内は持論を展開する。
しょせん、非行に走った奴はどうにもならない。
少年の健全な育成とか、平和な家庭生活とか、少年法とか家事審判法の目的はどうでもよく、
「俺たちは奇跡を起こすんだ」と。
それから、「そもそも、大人が恰好良ければ、子供はぐれない」とも主張した。

そんな陣内が今や「奇跡なんて起こるわけがない」なんてこぼしているが、
自分の発言に責任を持たないのにも武藤は慣れっこだった。

ところが陣内が武藤と居酒屋「天々」にやってきたのは、愚痴をこぼすためだけじゃないらしい。
アルバイトの明君は、陣内が担当した少年だった。
偶然を装ってはいたが、明君には警戒され、それでも陣内に問われた父親の様子を答える。
「駄目親父」だと。
明君が陣内のもとに来るキッカケとなったのは、他の学校の生徒と喧嘩して退学になったこと。
喧嘩の理由はよくあるもので、隣の高校の生徒に馬鹿にされて、
このままでは「男がすたる」と向かっていったことだった。
十代の男の行動原理の大半はこんなものでしょう。
退学後はファストフード店でバイトをしていたが、客と喧嘩をし、手を出してしまった。
そこで警察が呼ばれて、家裁に来ることになったのだ。
その結果、陣内が判断した処分内容は「試験観察」。
すぐに結論を出さず、一定期間、調査を延長するものだ。
明君の家庭はばたばたしているから、こういう時は様子を見たほうがいいと、
陣内にしては珍しい判断だった。延長したって変わらないってスタンスですから…。
陣内も明君も、家を空けがちな母親は浮気をしていると確信していた。
だけど陣内は父親の方が鍵を握っていると思っている。

ここで思い切って、武藤は陣内に父親のことを聞いてみた。
ここでもまた吹っ切れたと言うので、武藤はもっと突っ込んで、吹っ切れたキッカケを聞いてみる。
20代の頃、殴ってやったんだと。それも正体がばれないように。
それからは決着がついたとのことだった。
確かにこれでは、少年たちに勧められない。

ところで家事事件担当といっても、家裁でやるのは調停で、裁判ではない。
夫婦に来てもらって話を聞き、一番いい方法を見つけるものだ。
これは私の親が二度経験しているのでよく知っています。
だけど、一番いい方法だったかは…。まぁ無難なところで手を打ったという感じですかね。
それほど人の人生に介入するというのは、難しいことなんですよ。

家事事件担当となった武藤は、ある離婚を考えた夫婦を担当することになる。
離婚の調停は、基本的には調停委員が対応します。
調停委員というのは資格が要るわけじゃなく、
「人生経験豊富で、優れた人格を備えた男女」が務めるものらしいですよ。
で、その離婚の調停では、男女の調停委員が、当事者双方の主張を聞いて、話し合いを進めます。
そこで無事に話し合いが済めば問題ないが、打開策が見つからない場合、
家裁調査官が呼ばれることになるのです。

夫の名前は大和修次、40歳の私立大学理学部教授。
妻は三代子、32歳の専業主婦。
二人の間には3歳になる娘がいます。
性格が合わず喧嘩が絶えない、というのが離婚の原因らしい。
申立人は妻のほうで、娘の親権をお互いに譲らず、こじれてしまっていました。
夫の方はすでに二度離婚をしていて、今度が三度目。
今までの二度とも、女性を作ったのが原因でした。
そして離婚した後で、その浮気相手と再婚しているので、
二回目の離婚の原因は、今の妻の三代子だったということになる。
二人の前妻の間にも一人ずつ子供がいて、それぞれ母親のところで暮らしているそうです。

武藤はまず、妻の方から話を聞くことに。
妻は夫に女がいると感づいていました。
今までの原因が全部一緒なんだから、今回もそうだろうと考えるのは妥当かと思いつつ。
こうなると妻が親権にこだわる理由は、もはや意地でした。
夫婦の揉め事を突き詰めていくと、たいていが「意地」と「我慢」にぶつかるのです。

続いて、夫の話を聞くことに。
三度も結婚していると聞くと、よほどのプレイボーイかと思われますが、
黒縁の眼鏡をかけた生真面目な印象で、知的な男性でした。
今回の離婚の原因は性格の不一致で、夫の方が切り出したという。
最初は夫が娘を引き取ることに同意をしていたが、急に譲らなくなったと。
夫の言い分としては、妻はもともと子育てが得意な方ではないし、
無職でヒステリックな妻よりは、仕事があって冷静な夫のほうが、
娘を育てるのに適しているのではないか。むしろ、それこそが正解だと思っていました。
今まで二度の離婚では、前妻二人とも仕事を持っていて、親権を渡して正解だと判断し、
すんなり協議離婚で済んだのでしょう。
また前妻との子どもたちとは、相手が再婚して新しい父親ができれば会わないのが正解だという、
至って合理的な判断をする人でした。
ただし、妻が言うような女性の存在は否定していました。

以上の結果から、武藤も親権は夫に譲った方が良いのではないかという提案をするのですが、
案の定、納得はされず、ヒステリックな反論をされるばかりでした。

この問題を、武藤は陣内に相談してみた。
例の明君がバイトする居酒屋「天々」で。
陣内はたいして相手にもせず、人間なんてそう変わるもんじゃないし、
その男はこれからも離婚と再婚を繰り返す。
だから娘の親権なんて、本人たちに決めさせればよい、と。
そして、いずれにしても、その娘はいずれぐれて、家裁にやってくる、と。

ここには陣内の持論がありました。
「子供は親を見て育つ。両親が不仲だったり、情けなかったりすると、とたんに非行に走る」と。
私が大学の心理学科を受験した時、面接がありまして、志望動機を聞かれた時に、
「少年犯罪の原因を知りたいから」なんていっちょまえなことを言った気がするんです。
結局、大学を卒業しても、その原因の糸口すら見つからなかったのですが、
陣内の言ってることはなるほど一理あるな、と思ったのです。
もう少し早く出会っていれば、私の勉学に対する熱意が変わったかもしれないのに。

ちなみに、陣内は家裁調査官になった後もバンド活動を続けていました。
武藤も知ってはいたものの、陣内の音楽を聞こうとはしてこなかったのですが、
ひょんなことからライブの誘いを受ける。
そしてそれが明君や、大和さんも誘うという強引な展開に。
でもこれが奇跡を起こすのです。

このライブで、陣内が言っていた全てのことが繋がって現実になる!
陣内の発言は単なる無責任で出鱈目なんかじゃないんだよ。


イン
またしても過去へ遡り、語り手は永瀬に。
目の見えない者の一人称で語られるので、視覚に頼らない描写が多いのが印象的です。

そこは駅前のデパートの屋上。
永瀬は優子とともに、陣内がバイトしているという屋上に来ていた。
屋上にはステージがあって、陣内が演奏するものだと思っていた。
ところが陣内は一向にステージに登場しない。
その間、優子はコーヒーを買いに行くことにした。

ひとり残された永瀬に、ブラスバンド部の演奏に来た女子が話しかける。
目が見えないとは思えない見事なやり取りをする。
その後、陣内が陣内らしからぬ気配で近づいてくる。
いや、声は陣内なんだけど、足音が普段と違う。
それもそのはず、陣内は着ぐるみのバイトをしていたのだ。
嫌気がさして永瀬のところでサボっていたら、案の定係員に見つかって怒られる。
ところが陣内は急にバイトどころではなくなり、着ぐるみをかぶってどこかへ向かう。
「殴る」とか「全部吹っ切ってやる」という言葉から察するに、これは恐らく…。

これらをあえて永瀬の感覚を使って表現した文章というのは、本当に秀逸だと思いました。



チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

  • 作者: 伊坂 幸太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/05/15
  • メディア: 文庫


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僕は君のオモチャ

ミニアルバムなのですが、王道のロックあり、
染み渡るバラードあり、遊び心いっぱいの曲ありと、
バラエティ豊かで、飽きずに聞けます。
ミニアルバムなので、あっという間に聞けてしまいます。


恋の一方通行
一途なところが卓偉さんらしいロックナンバー。
歌詞もしっかり韻が踏んであって、前向きに楽しく聞けます。

そのままで
「そのままで」=「自分らしくあれ」っていうのは、
できそうでなかなかできなかったりするもの。
どうしても上手にやろうとしたり、無理してしまったり。
忘れかけてしまった時に聴く、心の処方箋です。

It's up to you(きみしだい)
なんだか懐メロチックなアレンジが印象的な曲。
歌謡曲のような匂いがします。
卓偉さんの遠吠えのようなシャウトも素敵。
個人的には、夜の路地裏のようなイメージがあります。

ABSTRACT(完全な相関性)
それまでの卓偉さんにはありそうでなかったようなロック。
理論的な歌詞がクールな演奏にのって、とてもカッコイイです。

僕らのヒーロー
皆さんそれぞれヒーローっていると思いますが、
卓偉さんのようなミュージシャンにとっては、
歌詞にあるような往年のロックスターたちがヒーローなのかな。
私はあまり洋楽を聞かないのですが、このブログで書いているアーティストたちや、
役者さんたちが私に影響を与えた方々であって、
そういうのは全てヒーローだと思っています。

僕は君のオモチャ
前作のアルバム収録の「イミテイション・ボーイ」では、
きっぱりと「僕は君のオモチャじゃない」と言い切っていたのですが、
あっさりと覆されます(笑)
それは意味合いが違っていて、言いなりになるとかいうことじゃなくて、
心を開かせるためのオモチャという意味。
なんて優しい歌なんだ。

テレビジョン
何がテレビジョンなんだろう?って思ってたんですけど、
よく歌詞を読んでみるとすごく深いのです。
「自分だけが映せない 見えてない」と。なるほど~。

この曲、以前卓偉さんがゲストのラジオの公開放送を見に行った時に、
弾き語りで演奏してくれたことがあったのです。
それを聞いた時は、あまりにまっすぐに届く声に鳥肌が立ちました。



僕は君のオモチャ

僕は君のオモチャ

  • アーティスト: 中島卓偉,片寄明人,黒沢健一,木下裕晴,宮原芽映,増本直樹
  • 出版社/メーカー: ZETIMA
  • 発売日: 2007/05/09
  • メディア: CD


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GO TO THE FUTURE

今年デビュー10周年を迎えたサカナクション。
彼らの音楽にハマったのはごくごく最近のことですが、
そのクオリティの高さと言ったら!!
このデビューアルバムからすでに、センスの良さが際立っています。

テクノやエレクトロニカをまぶしたバンド・サウンドと、
その調和がもたらす洗練されたグルーヴが、彼らの特異性を露わにしている。
これは10年経った今でも受け継がれていて、より洗練されていると思います。

そんな彼らの初期作品がつまったアルバム。
とてもデビュー作とは思えない仕上がりです。


三日月サンセット
何の気なしに月をみながら作った曲。
バンドアレンジにしようとしたときに思ったとおりのイメージにならなくて、
ようやく完成したそうです。
時間を重ねる度に変化していったという意味では、もっともサカナクションらしい曲。
バンド名の「サカナクション」には、変化を恐れずにやっていこうという意味が込められているのです。

インナーワールド
山口さんが引っ越す前に、昔住んでいた寒い部屋でつくったそうで、
その時期の勢いに任せてがむしゃらに書いたから、
曲ができたときのことはよく覚えていないそうです。
歌詞は10分くらいで書き上げたそうで、「動くしかない」というその頃の感情がぶつけられています。

あめふら
5人で活動をし始めた際に作られた、5人となったサカナクションとしては初の作品。
アメリカン・ミュージックとフレンチ・ミュージックの音楽要素を混ぜた、遊びの強い曲。
遊び心満載なので、楽しく聞いてほしいです。
私は新感覚でオシャレなサウンドに、ただただワクワクするばかりでした。

GO TO THE FUTURE
当時の山口さんの心情をそのまま表した楽曲です。
元はアコースティック・ソングで、3拍子の楽曲ではなかったらしいんですけど、
3拍子にすることで、バンドアレンジが固まったそうです。
歌詞だけでなく、メロディ、アレンジともに、一歩先の未来を意識したそうですが、
その未来が、今やってきたな、という感じがします。

フクロウ
ひだまりの中にある家で作った悲しい歌。
原曲ができた瞬間にアレンジが決まっていたそうです。
ギター・コードを作曲している間に思いついたアドリブの歌詞を使用しているとのことですが、
鬱屈して、右も左も見えなくなっていた時期にできたこともあって、
山口さんにとっては、ある意味希望みたいなもののようです。
「そして僕の目を見よ 歩き始めるこの決意を」という歌詞に心をわしづかみにされました。
フクロウのような鋭い目で意思を固めたんだろうな、なんて。

開花
札幌に移り住んだばかりのときにつくった曲。
新しい環境とか、新しい仲間とか、生活とか、今までとは違った社会に触れて、
自分自身が社会性を帯びてきたと自覚した曲。
音楽で食べていかないと!って思い始めたからこそ生まれたかもしれない楽曲で、
山口さんが許せるぎりぎりラインまでポップ感を出して試してみたそうです。

白波トップウォーター
バンドが制作した曲としては初の作品であり、
クラブ・スタイルの音楽を製作することのバンドの最初の試みでした。
山口さんがダンス・ミュージックと日本風のメロディーとの相性が良いと思い、
この試みをバンドスタイルとして続けるようにしたのです。
なので、全楽曲のスタイルは、ダンス・ミュージックという形をとっているものの、
打ち込みではなく、あくまでロック・バンドである事を念頭に、
すべてバンド形態で演奏した上に、テクノなどを合わせた形をとっています。
それであの独特な、おしゃれで洗練されたサウンドができあがるのですね。

実はこの曲は、山口さんが一番活発に遊んでいた曲に作った曲で、
バカみたいに釣りばかりして、その一方でモラトリアムな時間の流れに不安を感じ始めたりもした、
ちょっと青臭い時間を思い出す曲なんだそうです。

夜の東側
山口さんが釣りをするいつもの防波堤で、
夜から朝までずっと釣りをする自分を歌にしたいと思って作ったそうです。
「夜の東側」とはその時の状況を表していたのですね。



GO TO THE FUTURE

GO TO THE FUTURE

  • アーティスト: サカナクション,山口一郎
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2007/05/09
  • メディア: CD


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